5人の女性アーティストは、どんな思いを表現したのか?
 あわただしさに飲み込まれる前の穏やかな11月は、束の間の美しいひとときです。花の色や香りがこっくりと深まり、人の装いも少しずつ変化していくこの時期ならではの「毎日を大切に過ごしたい」という思い。一人ひとりの女性の気持ちに寄り添う展覧会「one fine day 〜素敵な下着からはじまる私の一日〜」が、青山のスパイラルガーデンで開かれました。
「花をえらぶように下着をえらぶ」というコンセプトで、女性ならではの至福のひとときを、さまざまな分野で活躍する5人の女性アーティスト(Loveliさん、多田明日香さん、maegamimamiさん、篠崎恵美さん、KUNIKAさん)が自由な解釈で表現。ジャンルを横断する楽しい仕掛けに満ちたインスタレーションがお披露目されました。一体どのような時間と空間がスパイラルガーデンに出現したのか、さっそくレポートしてみたいと思います。
■ Loveli(ラブリ)
モデルとして活躍する一方で独自の世界観を持ち、アーティストとしての活躍の場を広げているLoveliさん。展覧会の作品は、大きな布にプリントした身体の一部の写真と、一日の始まりを綴った詩。ゆらゆらとはためく布は、朝のまどろみのよう。ずっとこのままでいたくなる肌の温かい感触や、大切な人のことをぼーっと考える幸せなひとときを思い出しました。光とともに身体がゆっくり目覚め、生まれ変わった気分になれる時間は、まさに至福......。
■ 多田明日香
広告代理店で働きながらセルフワークとして自身のブランドを立ち上げている多田明日香さん。展覧会で製作されたのは、ひとつひとつじっくり覗きこんでしまう楽しい引き出しのアート。4層のアクリルに重なることで表現されたブラは、光が投影され唯一の影になります。「朝起きたときの気分や天気を感じながら仕立てられる下着があったら、どういう模様になるのかな」とデザインを考えたそう。引き出しをあけて下着をえらぶ、朝のきらきらした気持ちを大切にしたいですね。
■ maegamimami
女性をモチーフにした作品を中心に、イラストレーターとして活躍するmaegamimamiさん。展覧会では、鏡とイラストを組み合わせた立体作品にチャレンジされました。たくさんの青いバラと下着を身につける瞬間の女性が描かれた大きな鏡は、見る角度によって表情が変化。新しいランジェリーを身につけた自分を見る気持ちの高鳴りは、鏡を通り抜けた異世界に迷い込む喜びと似ているような気がします。
■ 篠崎恵美
花にまつわる様々な創作を行い、フラワーショップ「edenworks bedroom」やドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を手掛ける篠崎恵美さん。旬のランジェリーと花を鑑賞できる空間をつくられました。朝のはじまりでもある「ベッド」に寝転べば、香りを放つ花たちと対面。女性ならではのときめきを感じられる空間です。生花は会期中にドライフラワーへと変化する様子も楽しめ、会期後には展示されていたドライフラワーが来場者にプレゼントされるそうです。(抽選は会期中に終了)
■ KUNIKA
独自の感性でスイーツとアートを融合した世界観を表現するKUNIKAさんは、現在はロンドンを拠点に活動するスイーツアーティスト。展覧会では、それぞれ異なる性格の女性をイメージして作ったお花のアイシングクッキーを展示。幸せな朝のまどろみから始まったこの展覧会は、少しずつ五感を目覚めさせ、花をえらぶように下着をえらぶイメージに結実していました。
そして、一人ひとりの素敵な毎日が始まる。
5人のアーティストの作品から感じられたのは、心地よいめざめの時間。それは、丁寧につくられた下着にも、愛情こめて育てられた花にも内在するものだと気付きました。毎日のコンディションはいろいろだけど、季節の花と向き合うようにからだと向き合い、下着から必要な力を借りることは大切です。ハードな日は、甘いテイストの楽な下着を選ぶなど、女性ならではの密かな楽しみも味わいつつ。明日も、素敵な下着から一日が始まりますように。